夏休みをいただき、一人北海道へ

(FBの個人ページに上げたのが、そこそこ好評いただいたのでこちらにも)

女満別空港は、僕の全身を冷気でくまなく歓迎してくれた。
スパッと切れるようなそれではなく、
むしろ優しささえ感じられた。

まだ暖房が効いてないレンタカーに乗り込み、
今季おろしたてのアウターのジッパーを上げきって、
定規で几帳面に引かれたような道を真っ直ぐ進む。

速度制限の標識が全くなくて、
何キロで走ったらいいのか、今でもさっぱりわからない。

草を食む牛の群れや、
収穫が終わった畑に残ったトウキビの粒を
啄ばむ白鳥たちを撮りたいなと後ろ髪引かれながら、
集合場所の湖までアクセルを踏む。

朝イチ便ゆえ、朝食が喉を通らず、
現地に着いてから大好きなセイコーマートで、
大好きなすじこのおにぎりでも食べるつもりだったが、
道中全くコンビニがなくそのままダイビングに突入した。

文字にしたらどうしても書きたくなってしまったのだが、
セイコーマートのすじこのおにぎりは280円もする。
けど1個食べれば大満足だ。
お米もすじこもボリュームが半端ない。
尋常じゃない。致し方ない。

おにぎりだと躊躇する価格だが、
いくら丼と考えると非常に安い。

ぜひ皆さんも北海道に行く機会があったらお召し上がりください。
さて湖畔に向かう林道は、
森が紅や黄色に色づいて、すこぶる美しかった。

そう、素敵に眩しかった。

ダイビングポイントには、山葡萄の木が生えていて、
新倉さんがツルを持って揺すり始めた。

頭上から実がポトポトと落ちて、
関さんがそれを本当に嬉しそうに採る。
思わず笑み溢れるチームワークだった。

僕も手伝うふりしてちょっと食べてみた。
朝食を食べ損ねていたのでお腹ペコペコだった。

湖畔で採った甘酸っぱい山葡萄。
今日の一食目は贅沢だなと思った。

今回の目的はヒメマス。
普段は湖の深ーーーーいところにいて産卵期にのみ浅場に上がってくるのだそう。産卵が終わったら死んでしまう。見ごろはたった2週間。激レア。

風が森をくすぐる音を聴きながら準備。
普段より重いウェイトをつけ、器材を背負い、
「お邪魔します」と口にしてエントリー。
水温15度、まだ水が優しい。

顔をつけるとすぐにヒメマスの朱色が飛び込んでくる。
興奮しながらヒメマスだけを撮り続け、
気がつくとあっという間に30分。

ふと我に返り撮ったのをチェックすると全く絵になってない。
「よし、そろそろ本気出すかぁ」
と磯野家の長男坊のようにつぶやき、
いい感じの背景を探す。

あまり大言できないことだけど、
こういう時は達人をパクるに限る。
僕は固く心にそう決めています。

ちょっと泳いで関さんを見つけると、
周りにとんでもない量のヒメマスとウグイを従えていた。
湖中でも関さんは人気者だ。

撮影していらっしゃる姿をぼーっと見てる僕に
気づいた関さんが「ここでやれ」と合図を出してくれた。

水面を見上げるとどうだ、
湖面にせりだした真っ赤なモミジと、
真っ黄色の山葡萄が陽光に照らされて輝いていた。

なんて素晴らしいんだろう。

僕は遠慮しつつも、ブリリアントな立地の魅力に抗えず、
結局ごっつぁんし、撮り始めた。

自分の排気泡が水面を揺らしてしまうと、
せっかくの木々が乱れて写ってしまうので息を止める必要がある。

息を吸ったところで止めてしまうと
自分の体が浮いてしまい写真どころではない。

なので、息を吐ききって止めたまま、
ブッダの心で水面が収まるのをただ待つ。

ところが息を我慢している間に、
希望通りにヒメマスがすんなり来てくれる訳もなく、
ようやく来たと思ってシャッターを切ると、
ウグイの野郎がレンズの目の前を通って、
あからさまに邪魔をする。

ウグイよ!なんなんだ!!!

憤って見渡すと自分の周りにもメチャメチャいる。
どうやら僕も人気者のようだった。
ということにしておこう。

水深1m、非常に浅い。
吐ききってから止め続ける修行的行為に疲弊した僕の目の前で、
ウロチョロしてる奴がいる。
ウチダザリガニだ。

アメザリと違い白いボディのこのザリを舐めつつヒメマスを撮る、
という遊びに移行するも、
ザリとヒメの連携がこちらの意図通りになってくれるかっていうと、
やっぱり至極当然そうはいかないわけで。

この自然に翻弄される喜びを噛み締めながら、
そして、ただひたすら数時間おしっこを我慢しながら、
ヒメマスに没頭した。

ダイビングを終えると関さんが
「この上に甘い匂いのする樹があるんだよ、行ってみない?癒されるよ」
と僕をナンパしてくれたので、ホイホイついていった。

相変わらず風が木々をくすぐっている音と、
僕と関さんの息遣いしか聞こえない山の斜面を登っていくと、
不意に甘い香りがした。

鼻で深呼吸しながらキョロキョロすると、
黄金色に葉が輝く大木があった。

「綿菓子みたいな匂いでしょ」

何でこの人はこの香りが樹のものだって気づいたんだろう。

この人のように全身で感じ、耳を澄まし、
眼前の光景を受け入れることができたら、
もっと世界は美しく広がっていくんだろう。

見上げると木々の枝葉の
紅、黄色、オレンジ、緑、茶色、暖かな色たち広がり、
太陽が注ぎ込み、まるで厳かな教会のステンドグラスを
見上げているような気分になった。
そんな立派な教会行ったことないんだけど。

関さんが足元に生えてる草から小さな実を手折って、
これも甘いんだよと手渡してくれた。

「飲み込まずに噛んで吐き出して」。

白い実にかわいい目のような黒点が二つ。
毒殺でもされるのかと逡巡したけど、
味わってみると、なるほどほんのり甘かった。

関さんがその気なら簡単にやられるレベルで、
僕は調子に乗って何個か食べた。

Googleレンズで調べたけれど何だかわかんなかったので、
セキの実と呼ぶことにした。

完全にお昼の時間を過ぎてたので、出発することになった。
湖畔沿いの赤と黄色のトンネルに、
何度も何度も引き止められてポツリポツリと撮り続けた。

アイヌはいろんなものに神がいると考えたと聞いているけど、
確かにそう考えるのは無理もないな。荘厳な光景だった。

湖に住んでいる神々から、
祝福されてるようなそんな気分になった。

最近後悔することや、無力感、
罪悪感ばかりの毎日で折れそうになってたけど、

「よく来たね、お前が生きている世界は、こんなに美しいところなんだよ」
って言ってもらえた気がして嬉しかった。

ヒメマスを狙ってる釣り人のシルエットがエロいほど絵になってた。
そして釣れてる気配は全くなかった。

新倉さんが「この辺で一番美味い蕎麦です」というお店に入り、
待っている間、セキの実の正体を調べた。

富貴草と書いてフッキソウと呼ぶらしい。
wikiには花言葉がいきなり記載されていた。

「吉事」「良き門出」「祝意」。

・・・そうか。
冷えた身体にありがたい熱い蕎麦をすすると、
同時に別の暖かい何かも胃袋に流れ込んできた。

と、まぁそんな夏やすみでした。
このまま伊豆に戻らず、お客様と沖縄へ向かいます。
楽しい旅になるよう頑張ります。

あ、そういや
すじこのおにぎり、まだ食べてなかった。

本日のおまけ

3日間、ずっとキースジャレット聴きながらでした。

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