小気味よく心地よく、
船底を叩く波音のリズム。
ベタ凪は藍色。

潮の流れが作る潮波のエリアを越えると
左手遠くに見えそで見えない
波照間島。

「はてるま」って
「果てうるま(珊瑚)」の意味なんだよ。

ウメさんは操船しながら
多岐の知識をエッセイのように
軽やかに教えてくれる。

3回目の西表島。

目指す先は「仲之御神島」
通称オガン。
今年こそ、今度こそ。

たった5文字から発する
「何かあるに違いない」感に
好奇心がロックされる。

環境省の許可がないと
上陸すらできない
海鳥たちが支配する島で

過去2年、荒れてしまって
涙を飲んだ激流ポイント。

ひょっこりひょうたんな
島のフォルムが徐々に大きくなり
期待と興奮も比例する。

梅さんの軽快な語り口で
入念なブリーフィング。

器材を背負い、
強い潮に負けずに潜降するために
BC内のエアは口で吸い出す。

後ろで見てると
みんなの鼓動で
背中が脈打ってるように見える。

潜降ポイントに船がつき
合図で一斉エントリー。

全力でフィンぶん回して潜降直下。
濃紺の向こうに白く東の根が浮かんでる
みんなも順調についてきてる。
流れ・・あれれ緩やか。

たるんたるん。

カッポレたちが僕らを査定しに取り囲み
ウミヘビがゆっくり緊急浮上をしていく。

興奮しすぎた気持ちを
落ち着かせるようなコース取りで
切り立ったビル群のような
根回りをゆったり巡って
一本目は終了。

休憩にパインをいただく。
酸味と甘味が絶妙だと言われる品種。
みんなどっちをを味わっているのだろう。

潮が動くのを待って2本目。
ドボン・・・いいぞ、潮の圧を感じる。
根頭につくと視界の端から
すごい量の魚影が侵入してくる。

虹色ライン、ツムブリの群れだ。
僕らは横一線に根のエッジにへばりつき
潮上で乱舞するグルクンたちに歓迎される。

その上空から
まんまるとしたミサイルの編隊が
悠然とかっ飛んでいく。

イソマグロだ。
人の血の味を知ってるような
そんな凄みのある眼力。

魚群が動く方向に
みんなの視線がつられる。

刹那のスパンコールのように
排気泡のカーテンもそれに倣う。

1本目と今のと、
静から動へのギャップが
激しく素晴らしい。

海から上がっても興奮冷めず
「昼寝して起きたらマグロが目の前にいた。」
とモリさんは呆然としていた。

その後も、その翌日も
僕たちはオガンで素晴らしい時間を
過ごさせてもらった。

生きている星の砂を見たり
インディジョーンズの世界観のような
ポイントをぶっ飛ばした。

そうだ、バンプヘッド(カンムリブダイ)の
「群れ」にも出くわしたのにも驚いた。
シパダンでしか見たことがなかったから。

が、ウメさんの表情は晴れなかった。

そして最後の1本を残す時点で
「西表に戻ります」
と舵を戻し始めた。

潮のタイミングが合わないオガンを諦め、
旬が過ぎたマンタを狙うと言うのだ。

「でも確実にとは言えないので
お客さんたちには言わないでおきましょう」
最後の最後でギャンブルだ。

島の南側、
霧が薄っすらかかっていて
山に囲まれた静かな入江に着いた。

西表島のこの地域には道がなく
原生林のジャングルが広がっていて
船しか辿り着く手段がない。
最後のポイントも秘境だった。

すでに1隻の小さなボートが
ぽっちりと浮いていた。

「あそこにダイバーの泡がないと言うことは
マンタいないってことですね・・」
と水面を観察してウメさんがつぶやく。

その時点で僕はマンタを諦め
最後のダイビングを純粋に楽しもうと
スッキリした気分になっていた。

マンタがいなくても
この海とウメさんの技術を
すでに鱈腹堪能して満足していたからだ。

静かな、本当に静かな入江に
僕らは飛び込み
沖へ出していった。

これで最後ということもあって
体力に余力を残す必要もない
みんなアグレッシブに漕いだ。

外国で見るより
かなりぶっといバラクーダを追いかけ

ここでもイソマグロたちの
銀鱗をに魅了された。

軽トラの荷台からはみ出すくらいの
大きさのマダラエイをみてたら
誰かのライトが目の前を落ちていき
-30Mオーバーの白い砂底で止まった。

オギーが今回もやりやがった。
窒素が溜まりに溜まっているラストのタイミング。
彼はいつも思い出を作る天才だ。

僕は舌打ちしながら
仏の顔面で彼を制し
取りに行ってあげた。

我ながらなんて慈悲深いんだろう。

(回収したライトを見たら
うちで販売してるやつじゃなくて
投げ捨てようと思った)

水深をあげながら
コースを反転し
ボートの方へ戻っていく。

野菜の葉の形や
動物のツノの形など

いろんなサンゴが
びっしりと咲き誇っている上を
今回の旅を脳内でまとめながら
滑空していく。

ふと顔をあげると
ウメさんが狙っているのが見える。
あ、諦めてないんだと思い出す。

その瞬間、1枚のマンタが
向こうから正面衝突する形でやってきた。

まるでスローモーションだった。
葉加瀬太郎さんのバイオリンまで聴こえてきた。

マンタっていうのは
「何枚見たか?」的な情報の発信の仕方を
されがちだけど

たった1枚。

その1匹がとんでもないタイミングと
とんでもない存在感で
僕らのフィナーレを飾りに来てくれた。

1ダイブをまるで1つの物語のように
デザインするウメさんの
ガイドにみんな酔いしれた。

「いやー海に助けられました」
と謙遜するウメさんの恐ろしさに、
寒気がしたのは

まだ梅雨前で水温が本調子ではない
西表に潜ったからだと思うことにした。
また、行きたい。

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