今回まったく海の話じゃないです。親バカの話です。

2011年に今の場所に引っ越して「お隣さん、空手の道場だって。士道館っていうらしいよ。」と軽い気持ちで息子を通わせた。「館長」と皆が呼ぶその人が、極真の猛虎と呼ばれた添野義二さんで、ご本人自ら道場にいるということにびっくりした。「伊豆総本山・大室山一騎道場」と呼ばれたその場所は、世界中の支部から連日多くの人が道場に稽古に来たり、奉仕活動をしたりしてインターナショナルな異空間だった。

たまに道場にいくと、飾ってある数々の写真を1枚1枚紹介してくれて、「(プロレスの)三沢くんにエルボー教えたの僕」とか「マイケル・ジャクソンはうちで空手やってたんだ」とか、「ストリートファイターってゲーム知ってる?あれに僕のキャラが居るんだよね」とか気さくにとんでもない話を聞かせてくれた。子供の頃夢中になって読んだ「空手バカ一代」の登場人物が、なんで僕にこんなに優しく喋ってくれてるんだろうと不思議だった。

リニューアル前の士道館のHPに書いてあった「どんな人間にも己の士道があるはずだ」って言葉がすごく響いた。空手という手段で、伝えたいということはこういうことなんだなと感じた。

フルコンタクトなので、小学生といえども防具つけてても当てる。帯の色がどんどん変わっていって、うちの息子はすごい道場に通ってるんだなと誇らしい気持ちになった。

が、息子は水泳にのめり込みそのトレーニングで、稽古に行かない日が増えてきた。空手を辞めたいと言い争いした夜も数回あった。この道場はただ単に空手を教えるところじゃない、その向こうにある大切なことを教えてくれている。親の勝手な押し付けだということは十分わかっていたが空手を辞めてほしく無かった。

息子が中学最後の年となるこの春。昇段審査の10人組手に挑戦させてもらった。大人の有段者とも対戦したとのこと。もちろん防具なし。毎日数キロ泳いでいるものの、空手の稽古をしっかりしている訳ではないので、技術的にはダメダメだったのだろう。根性だけで乗り切ったのだと思う。帰宅したら「体中が痛ぇ・・・」と早々にぶっ倒れてた。

後日、道場から戻ってきた彼の手には、自分の名前が鮮やかなオレンジで刺繍された黒い帯があった。ついに初段をいただいた。年頃の彼の胸中でいろんな葛藤がある中、一度始めたことを中途半端に逃げ出さずにやり遂げてくれたことを心底嬉しく思った。

「黒帯取ったら始まりだから」と僕と目を合わせずにボソっと言ったその視線の先に、己の士道が少しづつはっきりと見え始めているのだろう。

おめでとう、これからもがんばれ。
館長、士道館の皆様、今後ともよろしくご指導ください。

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